「はじめまして」と「夏の日は雨のように」(ホラー短編小説)

 はじめまして、若菜です。このブログには、いわゆる異世界もの、ゲームものから普通の恋愛小説、ホラーまで色々なものを載せていきたいと思います。

 主に短編を載せて、一回で完結できるようにしようと思っています。連載はしないつもりです。


 とりあえず、初っ端からホラー行きますね。(^_^)

ちょっと怖いかもしれないので、苦手な方はご注意ください。





「夏の日は雨のように」


ジャンル  ホラー


文字数  1812文字



 今ではもう遠い夏の日の話。もう一度あの時に戻れるのであれば、願わくば……。


 蝉達の鳴き声の響く自然あふれる場所で、私達は毎年夏の数日間を過ごす。それまでは宿題に追われる夏休みでも、その数日だけは最高の日に変わるのだ。もちろん、普通に友達と遊ぶ日々も楽しいのだが、両親を仕事に邪魔されず独占できるその時は、天国にいるような心地がするのだ。いつもと違う環境で過ごすのも楽しかったし、泊めてくれる母方の祖父と祖母に会えるのも嬉しかった。

 中学2年生の夏休みのことだった。私は両親に連れられ、いつものように祖父母の家へと向かった。お昼頃に到着した私たちは、祖母の作ってくれたお昼ご飯を食べ、いつも通りおしゃべりを楽しむ。けれど、私は唐突に散歩に出掛けて行った。私にも、どうして急にそんなことを思い立ったのかわからない。なぜあの場所へ向かったのかも、全くわからないのだ。


 私はいつも散歩をする道とは離れた、家の裏の方へと進んでいった。暗くなると明かりがなく、車も通らないので、あまり行くきがおきなかったその場所に、私は初めて足を踏み入れた。なぜか行かなければならない気がしたのだ。そこで、誰かが待っている、と。

 少し進むと、まだ昼間なはずなのに何故か辺りが暗くなってきた。普通ならば戻らなければと思うはずなのに、不思議と怖くはなくて、私は突き進んだ。一歩、また一歩進むごとに体が軽くなっていく。

 ふっと、霧が晴れたようにあたりが明るくなる。気がつけば、私は森の中にいた。目の前には、見覚えのない鳥居。その鳥居はガラスのように透明で、色がない。後ろ側の木が透けて見えるのだ。

 不思議と驚きはしなかった。ここはどこなのだろうかと言う疑問すら抱かず、鳥居を潜る。すると、少し離れた場所に男の子が見えた。鳥居を潜る前までは見えなかったのに、潜った瞬間に突然現れたのだ。男の子は私の方を見ながら、手招きをしている。私はこの子に呼ばれていたんだ。そう確信した瞬間だった。

 招かれるがまま進んでいく。あと一歩、と言うところまで進むと、男の子は微笑んだ。

「こんにちは」

 男の子は嬉しそうにニコニコ笑っている。私はどうすればいいのか分からず、ただ男の子を見つめることしかできない。

「お姉さん、来てくれてありがとう」

 男の子が差し出した手に私が手を重ねると、男の子は怪しげに笑った。


 大きな石の上に腰掛けて、私たちはいろんな話をした。男の子は自分のことは何も離してくれなかったけれど、私の話を楽しそうに聞いてくれた。おとなしいその男の子は私の話を遮ることなく、上手に相槌を打つ。

 私が話を途切れさせると、男の子は唐突に私に問いかけてきた。

「ここでずっと一緒にお話ししようよ。だめかな」

 その時、やっと私は「おかしい」ことに気がついた。昼間なのに暗かったあの道も、透明だったあの鳥居も、全て、明らかに「おかしい」ではないか。恐怖を感じた。男の子は、私のことを先ほどとは変わった釣り上がった目で見上げながら、私の返事を待っている。断らなきゃ、帰らなきゃ。ここは「おかしい」よ。

「……あなたが、一緒に来るんじゃ、だめなの」

 でも、私の口から漏れ出たのはそんな言葉だった。帰らなきゃいけない。それはわかっている。だってここは、何かが「おかしい」のだから。だからこそ、こんな場所にこの子を置いて行けない。安全な場所まで、連れて帰らないと。そう、思ってしまったのだ。

 男の子はふっと笑った。そこにさっきまでの恐ろしい表情はなく、とても穏やかな顔で彼は笑っていた。

「やっぱりいいや。おねえさん、バイバイ」

 彼がそう言葉を発した途端、私は家の前にいた。もう、あたりは暗くなっていた。


 あの時以来、彼には会っていない。夏休みになるたびにあの場所へ何度も行くのだけれど、どこを探してもあの神社すら見つからないのだ。何度も何度も探した。何かと理由をつけて私はあの場所へ向かった。それでも、神社が見つかることも、彼に会えることも一度もなかったのだ。そうして、高校を卒業する頃、私は神社を探すのをやめた。


 遠いあの思い出の日。今はもう、思い出の中のあの子の顔は霞んで見えない。

 もしかしたら、彼はあの神社の神様だったのかもしれない。どんな神様が祀られているのかもよくわからない神社だ。ありえない話ではない。もし、そうなのであれば。

 雨はいつかやむ。地面に残った水も、いつかは乾いてしまう。あの夏の日だって、雨のように。




あとがき

読んでくださって、ありがとうございました。ちょっと意味のわからない話になっちゃったかも、短いのに詰め込みすぎたかも、と心配しております。

また覗いてくださいね。

また、どんなジャンルの小説が読みたい、などとリクエストがあれば私の予定にもよりますが、できるだけ応えたいと思っておりますのでよろしくお願いします。


以下、小説投稿サイトのランキングバナーです。

<a href="https://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=325518363" target="_blank"><img src="https://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=325518363&size=88" width="88" height="31"/></a>



<a href="https://www.tugikuru.jp/colink/link?cid=54614" target="_blank"><img src="https://www.tugikuru.jp/colink?cid=54614&size=s" alt="ツギクルバナー"></a>